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【森永乳業】巨大市場でポジションを確立した“デイリープレミアム”戦略
ファミリー向けの印象が強かった箱入りアイス市場に2005年、大人が満足するアイスとして登場した森永乳業「パルム」。平日、自分のとっておきの時間に食べる「デイリープレミアム」をキーワードに打ち出し、ファン作りを促進。現在はファンを起点とした話題化にも熱心に取り組んでいる。
| 森永乳業 | ![]() |
第一営業本部 冷菓事業部 マーケティンググループ マネージャー 木下孝史氏 アシスタントマネージャー 今藤知也氏 |

大人も満足の箱入りアイス
──幅広い層から高い支持を得ているロングセラー商品ですが、商品開発の狙いはどのようなものだったのでしょうか。
木下 パルムは2005年4月に箱入りのタイプを発売し、今年で5年が経過しました。現在は箱入りを中心に、1本入りも含めて全部で6アイテムを展開しています。多くの箱入りアイスは様々な味のバリエーションがあったり、本数がたくさん入っているなど、子どもを中心にファミリーで楽しめるという位置付けでした。しかしパルムは、大人が本当に満足できる、上質なアイスを目指しています。
少子高齢化の中で、アイスクリームが売れ続けるためには、子どもだけでなく大人にも支持される商品が必要です。また、デパ地下スイーツをはじめとした隣接競合の分野でも本格的な味の商品が人気を集めていたこともあり、アイスクリーム市場の3割を占める巨大な箱入りアイスのマーケットに、大人向けの本格的なアイスクリームブランドを投入することにしました。
商品開発のポイントは、なめらかさ、コク、口溶けの三つです。このポイントの満足度を高めるために、新たに設備を導入、素材の厳選、アイスと一緒に溶けるチョコレートの開発などを行いました。この3点によって、本格感・高級感が伝わる味わいになり、一度食べた人からのリピートや口コミにつながって、発売当初から順調に売り上げを伸ばすことができました。
──発売当初から売り場も確保できていたのでしょうか。
今藤 発売当初から多くの売り場を確保できたわけではありませんでした。アイスクリームの価格帯のボリュームゾーンは箱入りが300円ですが、パルムは発売当初の値段が350円でした(現在は380円・アーモンド&チョコレートは500円)。発売時、社内でも価格設定に関する議論はありましたが、これまでのファミリー向けとは違うポジションにしたいという強い思いから、思い切って少し高い価格帯に挑戦しました。一方、箱入りアイスの特売の多くは、例えば「300円の商品が280円」というように一律で価格を下げる方法を採ります。そのため、ボリュームゾーンである300円価格ラインとは違うパルムのような商品は、特売をかけにくいため、発売当初の導入率はあまり良くありませんでした。
しかし、商品を導入したお店では積極的に試食販売を行い、パルムのおいしさをお客さまに知ってもらうことで売り上げの実績をつくっていきました。こうして成功体験を重ね、地道に配荷を増やしていった結果、それにともなって売り上げも順調に伸び、発売年の秋からテレビCMほか各種のプロモーションを展開し、さらに売り上げを後押ししていきました。
デイリープレミアムを前面
──売り上げは順調に高まっていったのでしょうか。
木下 発売翌年の2006年は売り上げを初年度の2倍まで増やし、箱入りアイスの市場においてもトップクラスの商品となったパルムでしたが、2007年は微増と成長の踊り場にありました。そこで、改めてパルムのブランドの位置付け、提供できる価値を洗い直していく中で見えてきたのが「デイリープレミアム」というキーワードです。
調査をしていくと、パルムを熱心に支持してくれる層は20代.30代の独身女性と、40代を中心とした子どもに手が掛からなくなってきた主婦層でした。さらに、食べるシーンは平日の自分だけの時間に、ちょっとした贅沢を楽しむときが多かった。そこで、「自分の時間を楽しむときに、手軽に買えて本格的な味わいが楽しめる」というコミュニケーションを打ち出すことにしました。デイリープレミアムといってもひと言では伝わりにくいので、「なめらかなくちどけ、上質の証」というブランドスローガンを設定。俳優の寺尾 聰さんを起用したテレビCMのシリーズを開始し、パッケージもより贅沢を感じるものに変更したほか、平日の贅沢をテーマにしたプレゼントキャンペーンも展開しました。
──売り場でも同様の訴求を行っていったのでしょうか。
今藤 売り場でも父の日にはコーヒー、母の日にはネイルシールといったようにちょっとした大人の贅沢を商品に付けて、お父さん、お母さんへパルムを贈ろうという企画売場をつくっていきました。冷菓の売り場は温度管理などの理由からケース内だけで完結しなければなりませんが、積極的な試食や販促物によって店頭でも大人のちょっとした贅沢を演出しました。
ほかには映画の試写会やショッピングモール、イベント会場などで、ターゲットを絞ったサンプリングを行いました。こうしたデイリープレミアムを意識したコミュニケーションによって、2008年は初年度の6倍と、大きく売り上げが高まりました。
ロイヤルユーザー起点の販促
木下 現在、パルムのプロモーションは次のステージに来ています。それは、これまで着実に増え続けてきたブランドのロイヤルユーザーを起点とした話題の広がりです。P R 活動で情報を散りばめながら、興味を持ったロイヤルユーザーがオリジナルサイトへ訪問すると、思わず語りたくなるような情報が詰まっている。そこから家族や友人に話題を広げてもらうことを狙っています。
発信する情報は、“デイリープレミアム”と“パルムのおいしさの秘密”の二つの方向に絞っています。デイリープレミアムについては、日替わりの「デイリープレミアムカレンダー」を用意しています。このカレンダーは、月曜から金曜の平日5日間、様々なブロガーが入れ替わりで平日のちょっとした贅沢を紹介するものです。そして、パルムのおいしさの秘密については、前述のコク、なめらかさ、口どけの3点からその理由を紹介しています。この情報発信がロイヤルユーザーの共感を呼び、周囲へと口コミを広げてもらえればと考えています。しかし、そのための“思わず語りたくなる情報”については、今後さらに力を入れていかなければならないと思います。
──新しいツールを活用した取り組みも始まっています。
木下 今年3月に春夏限定であるロイヤルミルクティーフレーバーの発売に合わせて、ツイッターを活用したキャンペーンを実施しました。また、6月23日からはモバイルサイトをオープンし、Y a h o o !コミックとコラボレーションした携帯コミックの配信も始めています。こうしたネット上でのプロモーションによる話題の広がりによって、新たな認知を獲得していくことができると思います。
テレビCMも同様に新顧客層の開拓、認知の裾野を広げるという役割を持っていますが、ウェブの受け皿としての役割もあります。今はテレビCMで初めて認知する人だけではありません。ウェブ上でパルムのことを知り、さらにテレビCMを見ることでより深く商品を印象付けることができるとも思っています。マス広告とウェブ、両者をうまく掛け合わせた相乗効果を狙っていきたいと考えています。









