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【コクヨS&T】環境対応&コスト・手間いらずの訴求で 目標の4倍を売り上げる
コクヨS&Tが2009年に発売した針なしステープラー「ハリナックス」は、文字通り金属針なしに用紙を綴じられるという特性から、環境面での配慮・作業効率アップといった面から注目を集めた。11年1月現在で、2穴タイプで累計5万3000個、ハンディタイプで74万個を売り上げるヒットとなっている。
| コクヨS&T | ![]() |
クリエイティブプロダクツ事業部コアテックVU開発 第1グループ リーダー 青井宏和氏 同企画グループ 増田和之氏 |

楽しいエコを提案する
──開発の背景を教えてください。
青井 2008年から全社的に始まった「エコバツ運動」が背景にあります。これは、弊社の環境基準を満たしていない自社商品には、総合カタログでエコバツ(×)マークをつけて、11年までにエコバツマークがなくなるよう商品を改善していくという取り組みです。その結果、11年の総合カタログからはエコバツマークが消えました。私が所属する部署では、商品カテゴリーを問わず新市場を創造することを使命としていたのですが、そうした全社方針にならって、環境をテーマに取り組んでいくことになったのです。 従来のエコ商品は、使い勝手や機能の面でユーザーに我慢や負担を強いていることが多く、それがエコ商品の普及を妨げていると感じていました。それならば、道具としても便利で、使うことが自然とエコになるような「楽しいエコ」を提案すれば、より多くの人に受け入れられるはずです。それを文具でできないかと考えました。 ステープラーの金属針は、分別廃棄される際に外される運命にあります。書類をシュレッダーにかけるときにも外されます。そういった面倒や手間の元である金属針をなくせば、ユーザーにとって便利ですし、針を使わないので安全、しかも消耗品が不要なのでエコにもなります。ユーザーメリットを語れるストーリー性と、開発者の思いが合致した商品になると思い、針なしステープラーの開発をスタートさせました。
── 開発にあたってこだわった点はありますか。
青井 針なしステープラーは、すでに他社から発売されていました。ハリナックスにも使われている、切り込んだ紙片で紙を綴じるという基本構造は、弊社オリジナルではありません。ですが、既存商品では4枚くらいしか綴じることができず、使い勝手の悪さが普及しなかった理由でした。消費者調査などで分かった希望枚数は「10枚」。そこで、10枚まで綴じられるように既存技術を改良し、実用機として世の中に出すことにこだわりました。
──ターゲットはどのように想定しましたか。
青井 最初に発売した2穴タイプは、オフィスユーザーを想定しました。弊社にはすべて紙でつくった「オール紙ファイル」という商品がありますが、針なしステープラーで切り込んだ二つの穴を活用して、このオール紙ファイルに綴じておけば、すべて紙ごみとして廃棄できます。例えば年末に書類を処理する際に、プラスチックや金属でできた綴じ具を外す作業が大変だという話を聞いていたので、すべて紙ごみとして廃棄できるのはメリットに感じてもらえるだろうと考えました。
販促のキーワードは認知と体感
── 09年12月に2穴タイプが発売されました。プロモーションについてはどのように考えましたか。
増田 プロモーションにおけるポイントは二つ。「認知」と「体感」です。当時、針なしステープラーを知らない人は約50%、使ったことのない人は80%を超えていました。いかに商品を認知してもらい、商品に触れてもらう場を多く設定するかが課題でした。 商品のキーワードとしては、商品特性をストレートに表現した「針のないステープラー」を打ち出しました。また、「『環境』『効率』『安心』の三つの視点から生まれた新発想文具」であることも訴求していきました。 施策としてはまず、発売同月に開催された環境展示会「エコプロダクツ2009」に出展しました。この展示会では、従来弊社が出店する場合は、エコプロダクツ全般的な取り組みを紹介してきました。しかしこの時は「ハリナックス」をメインとして、すべて紙でできた「オール紙ファイル」と組み合わせた、オール紙ファイリングソリューション単体でブースを設置。参加者が実際触れる実機や、説明員を多く配置して、まずは驚きをもって世の中に認知されることを狙いました。結果的にユニークな商品であるとの評価をいただき、メディアにも多く取り上げられました。
── 店頭ではどのように展開しましたか。
増田 2穴タイプは、価格が5000円台と文具としては高額なこともあり、企業向け需要が約8割、量販店での需要が約2割です。そのため、主にBtoBの販促を展開しています。 企業への訪問営業には、実機を体感できる「体感キット」を1000セット用意しました。提案書自体もハリナックスで綴じたり、それをオール紙ファイルにファイルすることで、すべてが紙でできたファイルを作れる事を伝えました。 店頭でも実機とお試し用紙を用意し、体感を重視した展開を行いました。補足ツールとして、針を使わずに綴じる仕組みを説明する映像も制作。これは、エコプラダクツ展で来場者から「どうやって綴じているの?」という驚きの声が多かったことをヒントに採用・制作しました。「紙を綴じたときのサクっという音がいい」「使って楽しい」という反応が多かったので、使用時のシズル感を意識した作りにしています。この映像は店頭でのデジタルPOPとして活用するほか、ウェブサイトにも掲載しています。
── 10年7月にはハンディタイプが発売されました。
青井 ハンディタイプは、ホームユースをより意識しています。綴じる枚数は4枚程度ですが、手軽に使えるので、家庭内でレシピやメモ書きを綴じる用途などを想定しています。また、最近はオフィス文具を個人で購入するケースも増えているので、そうしたオフィスユースも視野に入れています。個人向けのため色にはこだわり、カラフルな5色で展開しています。増田 2穴タイプが予想を超える反響だったので、プロモーションではハリナックスのさらなる認知拡大を図ろうと、弊社としては異例のテレビCMを6月に実施しました。最初は2穴タイプの訴求をメインに、『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京)で30秒CMを放映。最後の1週間は、翌月のハンディタイプの発売告知をスポットで入れました。テレビCMの反響は大きく、「いつ買えるのか」「どこで買えるのか」といった問い合わせを多くいただきました。また、ハリナックスという商品名の認知もここで大きく広がったと感じています。 店頭でも、2穴タイプ同様、実機とミニパンフレットをセットにした販促キットを展開しました。ハリナックスで綴じたミニパンフレットは、お客さまに持ち帰ってもらい、周りの人に見せて「何これ?」と興味を持ってもらう広告媒体としての狙いもあります。これまで、ステープラーは売り場の棚の一角にひっそりと置かれていることが多かったのですが、ハリナックスを発売したことで、他社商品も含めて針なしステープラーを大きく打ち出すコーナー展開をしていただける文具店や量販店が増えました。
さらなるブランド認知が課題
──予想を超える反響とのことですが、販売実績はいかがでしたか。
青井 2穴タイプについては、当初の年間目標1万7000個に対し、09年12月の発売からの累計で5万3000個(11年1月現在)です。ハンディタイプについては、当初の年間目標17万個に対して、10年7月の発売からの累計で74万個(11年1月現在)です。いずれも予想の3~4倍の売り上げを記録しています。
──ヒットの理由をどう分析しますか。
青井 発売前はここまでのヒットは予想していませんでしたが、インパクトのある商品になるだろうとは思っていました。また、針を外すのが本当に面倒だと感じている人や、針の異物混入を気にしている人にとっては、商品特性上、必要不可欠な商品になると思っていました。弊社には「個客に訊け」という方針があります。これは、一人の困りごとを追求していくと、その裏に多くの潜在客がいるという考え方です。全員に支持される商品よりも、一人でも絶対に買いたいと思うものを分かりやすく商品化できたことが、ヒットにつながった要因の一つだと思います。増田 商品の良さやユニークさに加えて、「楽しい」と感じてもらえたことが大きいと思います。その楽しさが口コミによって広がり、それをうまく販促に活用できたのが良かったのかもしれません。
── 最後に、今後の展望についてお聞かせください。
青井 5月にはハンディタイプの新商品が発売されます。昨年発売したハンディタイプに対して、お客さまから「もっと枚数を多く綴じられる商品を」との要望をいただいたので、今回は8枚綴じを実現しました。要望に真面目に取り組んでできた商品なので、より多くの方に使っていただきたいと思っています。増田 私たちとしては、ハリナックスはヒット商品だと思っているのですが、友人に聞くと知られていないことも多いので、ブランド認知をさらに高めていきたいと考えています。店頭で流す映像も、これまでは機能に焦点を当ててきましたが、今後は「ハリナックス」という商品名が耳に残るような作りも考えていきます。「針なしステープラーといえばハリナックス」と言っていただけるくらいに、ブランド認知を高めていきたいです。









