販売促進事例

顧客の声を聞き続けて30年 徹底した顧客志向を支える組織 ヤマト運輸

6万人を超えるセールスドライバーから、日々接する顧客の意見や要望が寄せられているヤマト運輸。同社ではそこからクール宅急便など、ヒット商品を誕生させてきた歴史がある。多数の意見や要望を、どのように集約・精査して、商品の開発・改善に生かしているのだろうか。

クール宅急便「生もの」を送りたいという顧客からの要望に応えるため、長期間の構想と開発を経て誕生した「クール宅急便」。

お客さまに聞くしかない 背水の陣が生んだ顧客志向

 90年代に「日本のわがまま運びます」というキャッチフレーズで、徹底した顧客志向を世に宣言したヤマト運輸。「生ものを送りたい」「明日朝までに届けてほしい」など、当時にしてみれば無茶と思えるような顧客の要望から、クール宅急便や翌朝10時までには届く「宅急便タイムサービス」など、従来の発想をくつがえす、新しいヒットサービスを生み出してきた。そのような顧客志向の企業風土は、どのようにして生まれたのだろうか。

 それは「70年代に経験した危機的状況」がきっかけだったのではないか、とCSR部広報課課長の高松徹氏は言う。創業時は百貨店や電器メーカーなどの専属配送業者として成功していた同社であったが、徐々に新規参入業者との競争が苛烈化、さらに追い打ちをかけるようにオイルショックに見舞われた。業績は低迷し、もう後がないという中で、当時の社長が社運をかけ、個人向かの小口配送システムを開始。

「生き残っていくには、お客さまの声を聞くしかないという状態でした。以来、お客さまが何を望んでいるのか、熱心に耳を傾ける社風ができたと思います」と高松氏。

宅急便センター
全国約6000件ある宅急便センター。同社の中では最も顧客に近い存在であり、多くの声が集まる。

新サービスの代表格「クール宅急便」

「顧客サービスの向上こそ利益の拡大につながる」という考えのもと、他社に先行して新サービスの開発を行なってきたヤマト運輸。なかでも代表的なのが、 88年に全国展開した「クール宅急便」であろう。

 実は宅急便が生まれた76年から着想はあったという。「宅急便が始まった当時から、『こんなに早く届くのであれば、生ものも送ることができるのでは』と考えて、お客さま自身で発泡スチロールに氷を詰めて、魚や野菜を送る方もいたようです。ヤマト運輸として配送しても、お届け先が不在だと届くのが遅くなる。するとせっかく送ったものが痛んでしまっている、というお客さまからの声があり、なんとかしたいという思いがあったようです」と同スーパーバイザー 稲葉陽子氏。

 開発にあたっては、冷たい温度を保つ仕組みを開発するのに最も時間がかかったという 「冷蔵庫メーカーに『トラックに冷蔵庫を積みたい』といきなり電話をして、メーカーを驚かせたそうです」(高松氏)。研究者に相談したり、倉庫の会社に出向いて、どのようにして冷たさを維持しているのか聞きに行ったりと、地道な調査の結果、蓄冷材が輸送時の温度を保つ要になることが分かったという。「ただ最初に実験した板状の蓄冷材は、数時間しか冷気が持ちませんでした。そこで、材質や表面積などを工夫し、長距離配送に耐えられるような蓄冷材をメーカーの力を借りて開発しました」(稲葉氏)。蓄冷材の開発は現在でも行われているという。

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