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【ノバレーゼ】成長を続けるウエディング市場のリーディングカンパニー

販促会議 2011年6月号掲載 詳細を見る

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企業が売上げを高め、顧客を拡大──その過程にはいつでも販売の現場を大切にする社長の知恵が生きている。本連載では、販売の現場から次々とユニークなプロモーションを生みだす成長企業の社長陣を紹介。その販促の考え方を取り組み方とともに紹介する。
取材・文 上妻英夫(KIプレス)

平均点はダメ、特徴を出せる物件を再生

 ウエディング市場は約3兆円という大きな市場規模である。この市場は伸び悩み、横ばい傾向にあるというが、関連市場も含めると挙式披露宴の市場は大きなものである。
 その中で、独自性が強く、急成長を続けているのが、結婚式の業務にかかわって11年目でウエディング市場のリーディングカンパニーと称されるノバレーゼだ。同社は前身のワーカホリック(2000年設立)設立後、わずか6年で東証マザーズに上場を果たしている成長企業である。
 結婚式市場の各企業は「似たようなものが多く、差異化した提案が少ない」という。どちらかといえば、利用者に飽きられた市場でもある。一方では、新しい利用者の顧客心理をつかみ、独自性、オリジナル性の高い結婚式を提案している企業も少なくない。
 10年前は威勢のあったゲストハウス(邸宅の結婚式場)も、ここに来て勢いがなく、目立った動きを見せていない状況である。
 ノバレーゼは、婚礼衣裳事業、婚礼プロデュース事業、ホテル・レストラン事業の3本柱を打ち出して事業展開している。この3本の事業が、相乗効果を生みながら、収益性を高め、売り上げも伸ばすという、バランスの取れた増収・増益の体質をつくり上げている。
 従業員795名(パート・アルバイトも含めて)、年商108億円7900万円(10年12月期実績)、経常利益18億700万円である。06年以降、増収、増益の推移を示している。
 不況感の続く経済状況の中で、昨年、今年と新しい施設も開業。ゲストハウス(16店舗)、結婚式場・ホテル(4店舗)、ドレスショップ(16店舗)、レストラン(1店舗)、海外店舗(1店舗)で、合わせて38店舗を展開している(オープン予定含む)。「結婚式場の再生受託から婚礼プロデュースの委託まで、年間数件の依頼があり、その数は年々増えています。ただ、目利きをしてこれはいける、という物件のみシビアに対応しています。勝てる商売でなければ動きません。どこか特徴がないと難しい。すべて平均点というのはダメですね」と浅田剛治社長は語る。

歴史的建造物から旧来結婚式場までを再生させる

 ノバレーゼが成長している理由はどこにあるのか。「目利きのできるプロをそろえています。プロ野球選手に例えると、三振もするが、ホームランを打てるバッターを育てています。式場についても、ほかと似たようなものはダメですね。従来の結婚式場にない、全く新しいデザインの空間を提供しています。強いて言えば、特徴、ユニークさ、面白さがある結婚式場です。発想の源は、『自分だったらどうするか』『私ならどうしたら楽しめるか』ということです」(浅田社長)。
 同社の結婚式場は二つのタイプがある。一つは駅に近く、都市型で高級感を演出するシンプルでスタイリッシュな内外装や空間建築を特徴とする施設(モノリスタイプ)。もう一つは郊外型で自然の景観に恵まれた地域を対象に、高級リゾート感のある建築を特徴とする施設(アマンダンタイプ)である。
 また、同社の再生施設の事業展開も特徴の一つだ。歴史的・文化的価値があり、利便性が良い建造物、旧来型のホテル・専門式場をノバレーゼの開発・運営手法を投入して蘇らせた施設である。
 例えば、さいたま市大宮にある、創業38年の老舗婚礼式場「出雲会館」の風格ある建築、由緒ある神殿を残しながらリノベーションした結婚式場「ザ ロイヤル ダイナスティ」(04年)。改装後1年で年間挙式組数は約2.2倍、売り上げで約3.1倍も伸ばしたという実績がある。
 また、ホテルと古民家風の旅館、宴会場、教会、ゴルフ場などの複合施設「諏訪湖の森」のリノベーションは07年に完成。古民家風旅館と披露宴会場を新設したほか、ホテルの2室をスイートルームに改装し、眺望を生かしたウエディングサービスを展開。婚礼組数を従来の約4倍に伸ばすという実績を持つ。
 さらに、広島市の老舗料亭旅館「三瀧荘」(1946年開業)を再生し、完全貸切型の婚礼施設(09年10月オープン)に変えている。ここは各国の要人も泊まっていた伝統的な木造建築だ。同じように建築80年の歴史的建造物「旧逓信省姫路電信局」の外観を残したまま婚礼施設にした「姫路モノリス」(09 年11 月)もある。「手堅く、慎重に展開しています。依頼があった中で、『いける』という感覚と視点が持てたときに、再生事業が始まります。結婚式場らしくない式場を仕上げるのが我々の仕事です」(浅田社長)。

“特徴”と“ユニークさ”が業績を伸ばす一因

 同社には婚礼プロデュース事業のノウハウが蓄積されている。集客で悩んだり、結婚式場が古くなったり、ハード、ソフトの両面で貴重なノウハウを再生事業展開にフル活用しているのである。
 同社の婚礼プロデュースは「特徴があり、ユニークさがある」と評判だ。業界内でも噂を聞きつけて、相談、問い合わせする件数が増えているのである。そして「一つの施設に一つのバンケット(宴会場)」というスタイルを提案する。
 その理由は、結婚式のクオリティーを維持することと希少感を演出するためである。大型の結婚式場の場合、同時にいくつもの結婚式が行われるが、利用者は「自分だけの結婚式場」を求めるので、最近は敬遠されがちなのだ。
 結婚式場は従来、非常にアナログ的で、手間暇掛けて打ち合わせすることが普通だった。IT化が遅れている業界とも言われていたが、ノバレーゼは積極的にIT化を推進し、利用者にとって、特徴があり、オリジナル性の高い結婚式場を提案するために各種ITツールを活用している。
 活用例として、ドレスや会場の販売促進にiPadを役立てていることだ。昨年、アメリカで発売になった時にアメリカ版のiPadを銀座店で試験的に導入。以後、ウエディングドレスショップや会場で日本版を本格的に導入して活用している。iPadでは、ドレスの特徴が分かる多角的カットや歩くシーン、ビーズのクローズアップシーンなど、約5分で構成された動画を見ることができ、販売促進性も高いという。「ブライダルで大事なことは新しい提案ができるかどうか。『これが欲しかった』と言わせるだけの、インパクトのある提案です。iPadを皮切りに、ITツールでの提案も引き続き行っていきます。オリジナル性を追求しながら、いろいろなアイデアを生み出していくつもりです」と取締役営業本部長兼セールスプランニング局長の竹本英高氏は語る。
 こうした試みは、利用者ターゲットを25歳前後の新郎新婦と想定した戦略である。さらにiPhone向けのアプリケーションを6月に立ち上げる予定だ。このアプリには招待状の発送時期や引き出物選びの時期などスケジュール管理機能や、挙式までのカウントダウン機能など7項目の機能を搭載する。
 また、ウエディングプランナーと新郎新婦が、ネット上で挙式や披露宴の打ち合わせができる「マイページ」(仮称)システムを11年の秋までに完成させるとしている。

“ズル休み”から生まれた“アイデア休暇”

 業績が伸びている一つの理由が人材育成に力点を置いていること。社員の採用はリクルート時代、採用ノウハウを蓄積した経験が浅田社長にはある。ノバレーゼの名前がブライダルだけでなく一般的に知られているのは、ユニークな人事制度や休暇制度が注目されているからでもある。
 同社は、社員が決める“働き方”のフレックスキャリア制度を採用している。09年1月より、正社員・契約社員の雇用形態のまま、社員自らが勤務時間や休日を決めることができる制度だ。また、社内の人材流動化を進めるために、人材が欲しい部署が、社内イントラネット上で“求人広告”を掲載できるフリーエージェント制度がある。この広告を見て上司に知られることなく、求人部署と連絡を取り合うことができるというユニークな制度だ。
 10年3月から導入した「アイデア休暇」も注目されている。アイデア休暇はユーモアのあるストーリーを口実に、堂々と休暇を取得できる制度のこと。「このアイデア休暇も、まじめに働いている社員の息抜きが必要だろうと、エイプリルフールのようにウソをついて、ズル休みをするというのがヒントです。これも、私流にどうしたら楽しいか、という発想から生まれたものです」(浅田社長)。
 導入後の申請第一号は「モナコグランプリに参戦します」というものだった。こうした制度自体が話題になり、マスコミにも紹介され、社内のコミュニケーション活性化にもつながっているという。
 そのほかにも、30日の休暇を自身のリフレッシュのためだけに使える「リフレッシュ休暇制度」や「記念日休暇」がある。10年1月から導入した「地球の日」は、毎月第3水曜日にエレベータを使わないで階段を利用すること、そして、19時の定時帰社を徹底する日と決めている。さらに、帰社する際は各人が本社の最寄りひと駅先の駅まで歩くというものだ。
 同社の経営理念は「世の中に元気を与え続ける会社でありたい」である。「クレドも社員の意見を基に作成しました。持っているだけでは実現できないので、こうしたユニークな制度を打ち出すことで内容を実感してもらうためです」(浅田社長)。
 クレドの表には「人のために生きよ」「世のため人のためを本気で考えて生きよ。その先に幸福がある」と書かれてある。裏面には「本気道七か条」とある。ちなみに「信じよ」「愛せよ」「楽しめ」「考えよ」「貫け」「省みよ」「筋を通せ」の7か条が記されている。
 社長の経営信条でもある「楽しめ」のところには、「辛いことも前向きに捉えてみよう。どうしたら楽しめるかを考えてみよう」と書かれている。

“楽しい”環境を提供することが元気の素

 42歳の浅田剛治社長は上場企業では若手経営者だ。販売促進のアイデアも顧客、人間心理をどれだけ知っているかにかかっているという。
 情報収集の一環として電車通勤を続けている。中吊り広告、雑誌広告、通勤客の表情など、直接つかまなければ分かりにくいことがある。街に出なければ把握できないこともある。時代の空気を体で知ることが大事だという。
 浅田社長は社員との直接対話を好む。若い人材を育成できた企業が成長していく、という考えを持つ。社内のミーティングでもできるだけイベント化している。小さな飲みニケーションから、大きいイベントとして年一回の「社員総会」がある。これは全社員が参加して年間MVPの表彰などを1日掛けて実施するもので恒例行事になっている。総会では、社員が仮装したり、バンドが登場するなど、社員の代表がプロジェクト組んで行う。どちらかといえば、思い切り羽目を外し、終了後、二次会、三次会と盛り上がっていくのが社員総会である。
 このほか、社員の論文大会(「Nコン」)では、地区予選を開き、優勝者は社員総会にて全社員の前で発表するというものもある。こうした狙いは情報共有と連帯感を高めることにある。「当社の社員はとにかく元気です。私の仕事の一つが、“楽しい”という環境をつくり、提供することです。イベントの企画も自分が楽しいかどうかが目安です」(浅田社長)。
 浅田社長の今後の事業展開の方向性の一つが、会社で行っている人材教育をビジネスチャンスとして捉えることである。採用プログラム、教育プログラム、社員総会プログラムなど、同業他社に限らず、業界外の企業にも提案していきたい、という考えを持っている。「ヒューマンソリューション・ビジネス」と呼ばれるような、自社内で実施していることを他社に提供するビジネスである。「ソリューションビジネスは、ITや金融、不動産の世界でよく使われる言葉ですが、婚礼業界のソリューションビジネス(問題点を明示し解決するし施策を提供)を続けていますので、業界の枠を超えた世界にも挑戦していきたい」と語る浅田社長。「人のために生きよ」という経営信条を掲げながら、「どうしたら楽しいか」を発想の基本にする同社のこれからのビジネスから何が提供されるのか、これからも目が離せない。

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